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正信偈の解説と現代語訳

正信偈の意味【天親菩薩論註解 報土因果顕誓願】全文現代語訳

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現代語訳

天親菩薩の『浄土論』を注釈して、浄土に往生する因も果も阿弥陀仏の誓願によることを明らかにし。

この度は、正信偈「天親菩薩論註解 報土因果顕誓願」について意味を分かりやすく解説します。

語句説明

論註解・・・論とは天親菩薩の『浄土論』のこと。註とは著すと言う意味ではっきりさせること。解は解釈ということ。『浄土論註』や『往生論註』や『論註』ともいう。

報土因果・・・法蔵菩薩がすべての人々を救うためにたてられた48の誓願と、それを完成させる修行を因とし、それに報いて果として成就した浄土なので報土という。

天親菩薩造論説と天親菩薩論註解って似てるよね
お経を暗記していても、思わず間違えてしまうことがあるよ
そんな時には、間違いがわたし達に分からないようにして欲しいね

正信偈の原文

天親菩薩論註解
てんじんぼさつろんちゅうげ
報土因果顕誓願
ほうどいんがけんせいがん

正信偈の書き下し文と現代語訳

【書き下し文】天親菩薩の『論』(浄土論)を註解して、報土の因果誓願に顕す

【現代語訳】天親菩薩の『浄土論』を注釈して、浄土に往生する因も果も阿弥陀仏の誓願によることを明らかにし。

正信偈の分かりやすい解説

『浄土論註』制作の理由

天親菩薩が作られた『浄土論』とは、『仏説無量寿経』を註釈したものです。

天親菩薩は、自力によって悟りを得ることは凡夫の私たちには無理なので、阿弥陀仏がすべての人を浄土に迎えいれたいと願われた「本願」に身をゆだねることが救われるただ1つの道であることに気づかれました。天親菩薩は『浄土論』というお書物を書くことで、お釈迦様が阿弥陀仏の本願のことをお説きになった『仏説無量寿経』に対して註釈をされました。

その『浄土論』に対して、今度は曇鸞大師が註釈を作られました。これが『浄土論註』です。つまり『仏説無量寿経』の註釈の註釈ということになります。

かつて龍樹菩薩が仏道には難行道(難しい方法)と易行道(やさしい方法)とがあると示され、天親菩薩は『浄土論』の中で誰もが浄土に往生することができる「易行道」を勧めたと、曇鸞大師は『浄土論註』の中で讃えておられます。

私たちは自らが起こす煩悩によって、身を煩わせ、心を苦しめています。しかも、その苦悩の原因が、自らの煩悩にあることすらわかっていません。さらにまた、現に自分が悩み苦しむ状態にあることにも気づいていないとお示しくださっています。私たちは、煩悩に振り回され、目先の快楽にとらわれていると明らかにされました。

お釈迦様は、このような私たちを哀れんで『仏説無量寿経』をお説きになられました。そのような者こそ助けようとされているのが阿弥陀仏の本願で、阿弥陀様の救済が、今はわたし達を目当てとして届けられていることを教えられました。

阿弥陀仏の本願の教えをさらに明らかにされたのが天親菩薩でした。そして本願についての天親菩薩の教えをさらに明確にされたのが、曇鸞大師でした。

ポイント

お釈迦様は、本願を説くため『仏説無量寿経』を残される。
龍樹菩薩は、仏道の易行道(仏に任せること)を勧められる。
天親菩薩は、『仏説無量寿経』の解説書『浄土論』を作られる。
曇鸞大師は、『浄土論』をさらに解説されたのが『浄土論註』。

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親鸞聖人の名前の由来

親鸞聖人は、お釈迦様と天親菩薩と曇鸞大師とが説き示された本願の教えに感動し、自らの生き方を他力本願の教えに帰依され、自らを「釈親鸞」と名乗られました。

「正信偈」の中で曇鸞大師のことを「報土の因果、誓願に顕す」(報土因果顕誓願)と讃えています。報土の原因も結果も、どちらも阿弥陀仏の誓願による「おかげである」ことを示されました。

報土とは、阿弥陀仏の浄土のことです。

阿弥陀様がすべての人を救いたいと願い、お浄土を作ろうと思った原因も、すでにその願いが成就され建立された結果も、私たちが浄土に往生できる原因も、また往生するという結果も、すべて阿弥陀仏の誓願によるからなのです。われわれ凡夫の往生は、自分の努力次第ではなく、すべては阿弥陀様の大慈大悲の心である誓願によるからなのです。その本願のはたらきを「他力」と表現されました。他力とは仏力です。阿弥陀様の力(はたらき)です。

親鸞聖人の名前の由来

天親菩薩の「親」の字を取って=親
曇鸞大師の「鸞」の字を取って=鸞

正信偈の出拠

『論註』ただこれ自力にして他力の持つなし

『論註』「易行道」とは、いはく、ただ信仏の因縁をもつて浄土に生ぜんと願ずれば、仏願力に乗じて、すなはちかの清浄の土に往生を得、仏力住持して、すなはち大乗正定の聚に入る。正定はすなはちこれ阿毘跋致なり。たとへば水路に船に乗ずればすなはち楽しきがごとし。

『論註』この『無量寿経優婆提舎』(浄土論)は、けだし上衍の極致、不退の風航なるものなり。

『論註』問ひていはく、なんの因縁ありてか「速やかに阿耨多羅三藐三菩提を成就することを得」といへる。答へていはく、『論』(浄土論)に「五門の行を修して、自利利他成就するをもつてのゆゑなり」といへり。しかるに覈に其の本を求むるに、阿弥陀如来を増上縁となす。

『論註』おほよそこれかの浄土に生ずると、およびかの菩薩・人・天の所起の諸行とは、みな阿弥陀如来の本願力によるがゆゑなり。

『論註』これをもつて推するに、他力を増上縁となす。しからざることを得んや。

『論註』愚かなるかな、後の学者、他力の乗ずべきことを聞きて、まさに信心を生ずべし。みづから局分することなかれ。

『二門偈』婆藪槃頭菩薩(天親)の『論』(浄土論)、本師曇鸞和尚註したまへり。願力成就を五念と名づく、仏をしていはばよろしく利他といふべし。衆生をしていはば他利といふべし。まさに知るべし、いままさに仏力を談ぜんとす。(省略)これは如来の本弘誓不可思議力を示す。すなはちこれ入出二門を他力と名づくとのたまへり。

『安楽集』現在の弥陀はこれ報仏、極楽宝荘厳国はこれ報土なり。

『観経疏』「玄義分」すなわちこれ酬因の身なり。

『論註』この三種の荘厳成就は、本四十八願等の清浄願心の荘厳したまへるところなるによりて、因浄なるがゆゑに果浄なり。無因と他因の有にはあらざるを知るべしとなり。

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